Greeting企業長挨拶


~新年のご挨拶~

公立八女総合病院 企業長 田中法瑞

八女に赴任して初めての新年を迎えます。明けましておめでとうございます。旧年中は、皆様に大変お世話になりました。公立病院を代表して厚く御礼申し上げます。

私は毎朝、6時50分に久留米の家を出て、7時20分には院長室で仕事を始めます。掃除係の女性以外誰もいない始業までは、とても静かな時間です。ピアノ曲を聴きながら文章を書いています。何より良いことは、朝の通勤の風景です。国道ではなく、相川の交差点、下広川小学校、欠塚を通る道からは、朝日に照らされる茶畑や田園風景、また朝靄を見ることもできます。病院に近づくと見えてくる立花町の低山は、天気によって様々な表情を見せてくれます。
「五風十雨」という言葉があります。五日に一日風が吹き、十日に一日雨が降る農業に適した気候を表しているそうです。八女の風土は、まさに「五風十雨」であり、豊かな農作物と温和で優しい八女の人々を育んできたのだと思います。議員さんがみかん農家であったり、職員さんの家ではお茶を作っていたり、とても豊かな土地であることを知りました。また、有名なお酒やお茶だけでなく、和菓子、洒落たパン屋さん、老舗珈琲店、ローストチキン屋さんなど、八女の美味しいものも教わりました。この秋には、秘書さんが教えてくれた八女の季節限定の栗饅頭を各所の土産にし、すっかり「八女の栗饅頭」は有名になりました。

公立病院では年間約2500台の救急車を受け入れていますが、全国的な問題として、85歳以上の高齢者の救急患者が増加し、当院も例外ではありません。心筋梗塞、脳梗塞、骨折など入院治療を行って退院するということではなく、体動困難、発熱、食思不振などで救急搬送されたけれど手術の必要はなく、早期に元の生活に戻ることを支援することが重要になります。厚生労働省は2040年を想定した新しい地域医療構想において、在宅、介護との連携で、「治す」医療機関と「治し、支える」医療機関の役割分担を提唱しています。しかし、医師は「治す医療」の教育を受けており「支える医療」に戸惑っているように見えます。「やりたいこと」から「求められていること」へと地域医療でも発想の転換が必要な時代となっているということのようです。
私は、「来たバスに乗る」という気持ちで八女に来ましたが、バスは大型でクラシック、そして自分で運転し、行き先も自分で決めなければなりません。公立病院は、経営問題、再整備計画など厳しい環境にあります。住民の皆さんからの信頼は、病院にとって最重要事項であり、基本です。「地域になくてはならない病院」「みんなが働きたい病院」となるためには時間がかかると思いますが、「公立病院がどうなっているのか、どうなろうとしているのかわからない」という住民の不安に答えるよう説明を続けることが大切です。住民、職員、大学病院、医師会、自治体を含めて、みんなが共に同じ方向を向くためには、病院として積極的に情報を発信していくことが必要と認識しています。本年も、ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。