Shinbyoinsaiseibi新病院再整備について
公立八女総合病院整備事業について
公立八女総合病院企業団企業長の田中法瑞です。公立八女総合病院(以下、「当院」という。)の病院機能再整備計画の必要性とその目的について、ご説明申し上げます。 「なぜ新病院建設が必要なのか」という再整備計画の理念と、「どのような公立病院を目指すのか」という地域医療の将来像を提示することが大切だと考えます。(1)「地域になくてはならない」病院
全国には自治体病院(以下、「公立病院」という。)が853病院あり、当院もその一つです。 公立病院は、日本全体の病床数の13.6%を占めますが、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの時、入院患者の32%を公立病院が担当し、人工呼吸器が必要な重症患者についてはその56%を担当したという厚生労働省の統計があります。 厚労省、総務省は、いざという時の公立病院の重要性を改めて認識する結果となりました。 しかし、公立病院の多くは赤字経営となっており、総務省は公立病院の統合などに伴う新病院の建設費に40%の国の補助制度(元利償還額の40%を特別交付税措置)を設けています。 当院の病院機能再整備計画もこの財政措置を建設費の基本としています。 新興感染症、脳卒中、急性心筋梗塞などは、住民の平穏な日常生活を突然脅かす救急疾患であり、当院は八女・筑後医療圏でこれらの疾患に対応できる唯一の医療機関です。 「地域になくてはならない病院」として、当院が福岡県から地域医療支援病院に指定されている理由もここにあります。 日本には国民皆保険制度があり、自由に診療を受ける権利が保障されています。しかし、果たして都会と地方で同じ質の医療が担保されているかというと、そこには問題もあります。 大きな病院が集中し、サービスや高度医療を提供できる都市部と、医師や看護師が不足し、地域医療を担う赤字経営の公立病院に頼る地方では、結果的に安心して医療を受ける機会や実際に受ける医療の質に差が生じている可能性があります。 特に急性期心疾患、脳卒中では、治療までの時間によって、救命率や治療後の社会復帰できる割合は大きく異なります。 住んでいる地域が、急性期医療に対する医療提供体制が整備された地域であるかどうかで、人の命が救われる確率が異なるというのが、残念ながら日本の現実です。 地域間格差の最たる問題のひとつだと考えなければなりません。 新病院は、八女・筑後医療圏において特に急性期治療を完結し、例えば脳梗塞における血栓回収術など、このような医療の地域格差を解消することを大きな目的としています。(2)「皆がかかりたい、働きたい」病院
地震や水害などの自然災害のことを考えると、地域における災害時の機能を維持、発展させることが今ほど重要になっている時代はありません。 厚生労働省も、新しい地域医療構想で「住み慣れた地域で、安心して豊かな歳を重ねる」ことを目標として掲げています。 また、脳疾患、心臓疾患のほかに、がん、小児・周産期医療についても、大学病院をはじめとした久留米地区の医療機関ではなく、できれば地元の病院で治療したいという住民の方も多いと思われます。 このような要望にお応えするには、人材が必要です。2050年には生産年齢人口が2025年と比較して全国で1千万人減少することが予想されています。 高齢化による医療需要を支えるためには、医師だけでなく看護師を始め病院で働く人材の確保が、今後益々困難になることが予想されます。そのためにも、「働きたい病院」として選ばれる病院になることは、優先されるべき重要課題です。 また、1994年に当院が新病院を建設した当時は、他の病院はまだ旧い施設で、当院に患者さんは集まっていましたが、2001年から2015年にかけて相次いで周囲の病院は新病院を建設し、当院だけが旧い病院となり、患者さんにとってもかかりたい病院ではなくなってしまっているという現実があります。 患者さんにとっても、医療人材確保の観点からも、「この病院で治療したい」「この病院で働きたい」と言ってもらえる魅力的な病院を整備することが再整備計画の重要な目的のひとつです。(3)特色ある「みどりの杜病院」との統合
計画では、当院はみどりの杜病院との統合を目指しています。 みどりの杜病院は、全国的にも珍しい独立型ホスピスです。通常のホスピスは、病院の一部をホスピス病棟として使用しています。 みどりの杜病院には緩和医療専門医が常勤医として勤務しており、また、ホスピスでありながら在宅医療を提供しているという特色もあります。 八女・筑後医療圏では、年間に約500人の方ががんで亡くなられます。その中で、みどりの杜病院は、ホスピスで200人以上、在宅で100人以上のがん患者さんを看取っているという実績があります。 このような病院が地元にあるということは、住民にとって大きな安心であると共に、地域医療としても重要な機能を果たしている病院と言えます。 この特色あるみどりの杜病院(30床)と当院(300床)が統合しますが、26床を削減して、みどりの杜病院に隣接して304床の新病院になることを予定しています。(4)再整備計画と支援体制(大学、医師会、総務省)
「今でも赤字なのに、再整備計画で新病院を建設してやっていけるのか」という住民のみなさんの声も聴こえてきます。 これには、二つの重要な要素があると考えます。総務省からの建設費の40%補助という財政措置、もう一つは久留米大学からの医師派遣、この二つです。公的補助がなければ新病院建設、再整備計画の事業収支シミュレーションは成立しません。 また現在の病院経営の赤字は、医師派遣の縮小により診療体制が整わないことが大きな要因となっています。 今回の再整備計画の策定にあわせた久留米大学との協議により、昨年10月には、学長、医学部長、病院長の連名で、「私たち久留米大学は、公立八女総合病院再整備計画による新病院建設を支持、応援いたします。また八女・筑後医療圏の基幹病院として医師派遣に協力してまいります」という文書が、教授会の承認を経て発せられました。 医師の安定的な確保は、病院経営にとって何より重要な課題です。また地域医療を支える八女筑後医師会からも医師会長名で、再整備計画に賛同する旨の文書を発出していただきました。 総務省の建設費に係る特別な交付税措置と大学からの医師派遣は、再整備計画の財政的な収支シミュレーションを考えるとき、どちらも欠くことのできないものです。 しかし、最も大切なことは、当院職員がひとりひとりの患者さんに対して、誠意をもって診療や看護を行っていくことだと思います。そのことによって、住民の皆さまの信頼を取り戻すことが何より大切であることと認識しています。 また、患者さんの高齢化への対応は喫緊の課題であり、在宅、外来、介護との連携を強化することも益々重要になっており、引き続き医師会の先生方との連携と協力が必要であることは言うまでもありません。(5)病院の信頼回復と情報公開
再整備計画については、住民の皆さまのご理解と信頼、そのもとになる情報公開と説明が何より大切と考えております。 2025年1月末には、広川町と八女市内の三か所での「地域医療懇談会」を開催しました。 公立病院の役割と再整備計画の必要性について説明し、直接住民の皆さまの声を聴く機会となりました。 当院は昭和24年に八女民生病院として民生委員の皆さまと住民の力で創設された病院であり、住民の皆さまの強い思い入れと同時に「信頼回復」の重要性を改めて認識しました。 「新しい病院を建てれば問題が解決する訳ではなく、職員の意識改革が必要」というご意見もいただきました。 今後とも、「不安を抱えて受診する場所が職場である病院の職員には特別な想像力が必要だ」という職業倫理の不断の醸成と情報公開は、どちらも重要と考えております。(6)筑後市立病院との機能分化
高齢化など今後の人口構造の急速な変化のなかで、へき地等における医療や、脳梗塞、心筋梗塞、新興感染症などの救急・小児・周産期・災害などの不採算部門に関わる医療の多くを当院が担っていかなければなりません。 八女・筑後医療圏には当院と筑後市立病院という二つの公立病院があります。 いずれも主に久留米大学からの医師派遣を受けていますが、赤字経営であり、両院がこのまま将来にわたって今のままの医療提供体制を維持することは困難です。 現実的に、久留米の三次医療機関に頼っている救急医療体制も、久留米医療圏の病院の医療受給のひっ迫により危機的な状況です。 今回の再整備計画は、このような状況のもとで、二つの病院の機能分化を行い、将来的な統合を見据えた地域完結型の医療の基礎計画という側面を有しています。 この点については、久留米大学、八女筑後医師会、当院、筑後市立病院、八女市、広川町、筑後市による「八女・筑後医療のあり方検討協議会(仮称)」を設置し、福岡県とも連携して両病院の機能分化の具体的内容を含め検討を重ねていくことで合意しています。 これからの地域の皆さまの医療の安心のために、私たちは誠意をもってこの再整備計画を用意しました。住民の皆さまのご理解とご協力を、切にお願いする次第です。お知らせ
新病院再整備や地域医療のあり方等についての懇談会「地域医療懇談会」を開催します。 日程などの詳細は以下のリンクよりご確認ください。 皆さまのご来場をお待ちしております。 〇「地域医療懇談会」の開催について
公立八女総合病院整備基本構想・基本計画
基本構想・基本計画について以下よりご覧いただけます。基本構想(令和元年12月) |
基本計画【追補版(令和7年3月)】 |
その他・関連情報など
関連情報など今後更新予定です。
ご意見をお寄せください
新病院建設事業に対するご意見をお聞きしております。 お寄せいただいた内容は、ご意見として取扱い、基本的に個人への回答は行いません。 なお、お寄せいただいたご意見等については、個人情報等を配慮した上で当院ホームページにおいて公表させていただく場合がありますので、ご了承ください。
ご意見等をお聞かせください | ✉ 【Eメールアドレス】shinbyoin@yamehp.jp ※①および②をご記入ください。 ①件名に「新病院再整備」 ②内容欄に「お住まいの地域」「年齢」(例:立花町 30代) ※応募期間~8月27日まで |
---|